7月のキノコ観察会はクライマーの方たちと駅で集合し、そこから集合場所の再度山へと登っていくルートを歩いて行った。
駅に集合したのは8時。
山の駐車場での集合は10時。キノコが多ければ時間ギリギリかたまに遅刻するし、少なければ余裕で間に合う時間である。
その日は梅雨の間の晴れ間で、そこら中にキノコの姿を見ることが出来た。
僕は歩きながら、
「こりゃ確実に遅刻だな、、、」
と最初のほうで開き直った。
その日は「キノコ探しの天才」と呼ばれているS野さんも参加しており、前を行く僕らが完全に見落としたキノコを次から次へと発見していく恐るべき探索能力を持っているのでした。
もしかして目が3つぐらい付いてるのやろか、まるで『三つ目がとおる』やな、、、僕は他の誰も知らないであろう、そのマンガの題名を思い浮かべて、一人ほくそ笑む。
そんな天才が崖の上に綺麗な赤いキノコを見つけた。
「あぁ、ベニタケですね、、、」
僕はその珍しくもないキノコをそう言ってスルーしようとしたのだが、天才はポツリとこう言った。
「欲しいです、、」
え、マジで、ベニタケやで、、どこにでもあるやん、、しかも、崖の上やし、、(と心の中で叫んだ)。
「登ろうかなぁ、、」
天才はその崖を下から見上げてそんな風に言った。
いやいや、、結構たいへんよ、、滑ったら危ないし、、しかも『それほどの』キノコじゃないし、、、(これも心の叫び)
その壁というのは土砂の崩れを防ぐために作られた、人の身長よりも少し高い石積みで作られた石垣で、その石垣の上部は人が歩けるぐらいの平らな部分があり、足を上手いことかけていけばその壁に登ることが出来るのであった。
いやぁ、でも時間ないしなぁ、、で、登るのも危ないしなぁ、、それに『ベニタケ』やし、、、(またまた心の叫び)
そんな回りの雰囲気を察したのか、それとも登るが自分では困難と感じたのか、天才は逡巡していた、、、
そんな逡巡している天才の前に、すっくと現れた人がいた。
筋金入りのフリークライマーK野女史だ。
(後半に続く)